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本と6ペンス

The writer should seek his reward in the pleasure of his work. ("The Moon and Sixpence" Somerset Maugham)

163.The Moon and Sixpence (W.Somerset Maugham)

サマセット・モーム「月と6ペンス」である。
自分の英語能力からすれば背伸びをしすぎた気がするが、なんとか物語を追って読み終えることが出来た。とりあえず読み切ることが大事である。挫折せずになんとか食らいついて、その自信をもとに次へ次へと読んでいくうちに、読解力はついてくると期待している。語学力とは一つの能力であるから、その学習も勉強というよりは訓練といった要素のほうが強い。

かなり手ごわそうだったので、内容をあらかじめ把握したうえで読んだ。
日本でも有名なサマセット・モームの代表作の一つである。以下の概要はwikipediaから。
『月と六ペンス』(つきとろくペンス、The Moon and Sixpence)は、1919年に出版されたサマセット・モームの小説。画家のポール・ゴーギャンをモデルに、絵を描くために安定した生活を捨て、死後に名声を得た人物の生涯を、友人の一人称という視点で書かれている。この小説を書くにあたり、モームは実際にタヒチへ赴き、ゴーギャンの絵が描かれたガラスパネルを手に入れたという。題名の「月」は夢を、「六ペンス」は現実を意味するとされる[1]。

妻子も安定した生活も棄て、チャールズ・ストリックランドは絵描きになることを決意する。周囲の理解を得られないままに自ら極貧の環境へ身を投じ、その中で彼は才能を発揮していって…という話である。
芸術を追いかけ社会的な人間のモラルや倫理に一切とらわれない彼は、それでも、彼の芸術を理解し信奉する少数の人間によって辛うじて生命を繋ぎ、病で息を引き取るまで絵を描き続ける。

甲斐性、という言葉がある。
「積極的な気力と生活能力に富んだ、頼りがいのある性質。」と国語辞典には書いてあるが、ストリックランドは要するに、この単語とは正反対の位置に立つ人間であった。彼は芸術のために生涯を捧げると決意し、「社会的存在」としての人間性と引き換えに究極の自由を手に入れたことになる。

問題は、これが人間の生き方として幸福なのかどうかであろう。
そこそこ出世し、魅力的な妻と可愛らしい子供に囲まれ円満に過ごすことと、故郷から遠く離れた地で自分の本当にやりたい芸術に挑戦して、ひっそりと死んでいくこと。月並みな言い方をすれば、どちらも幸福な人生である。ただし、文学の題材として描きたくなるのは後者であろう。「自分の一生を単純に生きる」という哲学は、洋の東西を問わず魅力的に見えるものらしい。

作者であるサマセット・モームも、そういう思想の持ち主だったのではないかと推察できる。この本の最初の部分で、こう書かれているのだ。
the writer should seek his reward in the pleasure of his work.
自分なりに下手くそな解釈をすれば、「作家が享受する報酬は、ペンをとること自体への喜びの中に見出されるべきである」という感じになるだろうか。とにかく美しい文章であるなと感じた。日本語では日本語なりの表現の仕方があるだろうが、光る文章が読者に強い感銘を与えるのはどの言語でも変わらないだろう。

さて、とはいっても、今回の読書はものすごく疲れた。
大学一年の春、まだ本を読む習慣もついていなかった頃に無理矢理ロシア文学を読み漁っていた頃に似ている。内容は分かるが、とても疲れるし、ストーリーを吟味するだけの余裕を持つことが出来ないのだ。
とにかく、当分は多くの人が指摘するように英語学習者向けの副読本を読んでいこうと思う。新しく「洋書 副読本」という感じでタグでもつけて、どんどん読んでいきたい。

一年という留学期間でどこまで語学能力が鍛えられるかは不明である。言うまでもなく、それは自分の取り組み方次第なのである。本をたくさん読みながら、そして(親から注意されたように)現地でできた友人と過ごす時間も大切にしつつ、ロンドンで過ごしていけたら素晴らしいと思う。

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